学者未満

思うことをアウトプットしています。

暗黙知を害と思わない人たちの話

セミナー参加者と暗黙知について意見交換しました。その重要性をうまく伝えられなかったことを反省し、もう少し考えてみようと思います。参加者は技術系のいわゆる職人タイプの方でした。

 

ディスカッションポイントは、

「新人が入ってきた時に、先輩としてどんな方法で教育しているのか」という点です。

マニュアルはない(キリ  とのことでした。

「まじで?普通あるでしょ?」と耳を疑ったのですが、この業界では、口頭説明や動作観察で伝えなければ育成はできないというのです。よって、新人教育は、先輩が常につきっきりで作業を一緒にやりながら覚えさせる、これを1ヶ月続け、徐々に1人で経験を積ませる、3ヶ月あればほとんどの作業は覚えられる、というのが教育法ということでした。俺の背中を見て学べというどこかで聞いたような精神論です。(ここでは業界を詳しく紹介できませんが、職人気質が強い産業であることだけは言っておきます)

 

ディスカッションを続ける中で、特に「マニュアル」というキーワードに強く反応されていました。私自身のバックグランドはITなので、マニュアル、指示書主義の業界出身者からすれば考えられない話で、両者真っ向から意見がぶつかるわけなんですよね。指導の効率を高めるという考え方はなさそうです。ただ、緊急事態に出くわした際の紙の重要性という意見が他の人から出てきました。

 

そこで私は少しアプローチを変えてみました。もし、緊急事態、これまで教えられなかった発生確率の低い処理を新人は先輩の手を借りずにやりきれるのでしょうか?休日中に後輩から電話がひっきりなしに相談してくるは場合どうしますか?

 

当然ですが、新人にすべてを教えることはできません。緊急事態においては、マニュアルの事前準備の有効性は納得してくれました。ここでいうマニュアルはどちらかといえばコンティンジェンシープランなのでしょうけど、暗黙知をなくす動機づけにはなりそうです。

 

次に、暗黙知とコストの関係を理解すること。参加者は、教育に3ヶ月かけることで自身の生産性が落ちることを理解できていません。当然ですが、コスト管理も意識できないわけで、ここは経営者の問題になってしまうのかなと。その先輩社員が教育担当者として実作業を行わないで新人の育成に注力できるなら・・・そんな経営資源は中小企業にはありません。社長ができないならコスト管理、生産管理の部分を紐解いていかなければならないでしょう。まずは、コスト感覚を身につけさせる必要性を痛感しました。少なくともコスト感覚をどのように持たせるか?このあたりを切り口に次回ディスカッションしたいと思います。